2016/05/25
【弁護士が解説!】事例でみる賃料滞納による明け渡し
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賃料滞納による建物明渡しに関する事例
相談者であるオーナーは,3年前,1階が事務所,2階及び3階が住居の3階建収益用物件を購入しました。
購入時において,事務所,住居ともに賃貸中の物件であり,賃料は月に50万円,銀行への借金返済を含めてコストは35万円程度でした。購入後,1年程度は,上記の収支状況を維持できたのですが,購入から1年後,1階の賃借人から賃料が滞るようになりました。2,3か月程度,支払いが滞ったら支払いを督促し,なんとか支払ってもらうという状況が続いていましたが,この半年間は全く賃料が支払われなくなったのです。1階事務所の賃料が20万円だったため,半年間,月に5万円程度の赤字が発生することになったため,相談を受けました。 

前のオーナーから引き継いだ賃貸借契約書を確認したところ,連帯保証人なし,敷金及び保証金もなし,という契約となっており,その他に担保もない状況でした。賃借人の経営状況も悪化に一途であったことから,このままの状況では賃料収入が得られない可能性が高かったため,早急に賃借人に当該建物を明け渡してもらうように交渉を進めました。

裁判による解決が適切なのか
上記の賃貸借契約では,賃料支払いが遅滞気味となっており,かつ直近半年間の賃料が支払われていないことから,裁判をした場合には,特別の事情がない限り,勝訴判決が得られると考えられました。それでは,本件は裁判によって解決すべきでしょうか。 

この点,裁判で勝った場合であっても,賃借人が任意に立ち退かない場合,勝訴判決が確定してから執行手続の申立てを裁判所に行う必要があり,これには相応の費用がかかる上,数ヶ月程度の時間がかかる場合があります。例えば,裁判をして,相手が争わずに3か月程度で勝訴判決を得られたとしても,その後,執行手続に2か月かかったとすれば,解決まで5か月程度かかることになり,結果として空室による損失が,20万円の5か月分の,100万円発生することになります。賃借人が裁判において争ってきた場合には,勝訴判決を得るまでにそれ以上の時間がかかり,損失額はさらに大きくなります。また,賃借人に支払能力がなければ,100万円の損害賠償請求が認められたとしても,未払いであった120万円の賃料を含め,その回収は極めて困難でしょう。
交渉での解決
以上のとおり,裁判による解決は,賃借人を強制的に立ち退かせることができ得る一方,通常は,時間と費用がかかります。そこで,上記事案では,任意に賃借人に建物を明け渡すように,弁護士が交渉しました。弁護士が入って交渉を行った結果,賃借人が2週間程度で建物を明け渡しました。遅延損害金は免除したものの,未払賃料原本分や原状回復費用についても分割払いで支払う旨の合意書を取り交わし,最終的には全額支払いを受けることができました。
収益物件購入の際の注意点,賃料滞納時の対応
弁護士に依頼した場合,弁護士は,直ちに裁判をして判決をとって解決すると考えていらっしゃるオーナーの方が多くいらっしゃいますが,実際には裁判手続以外の解決が経済合理性を有する等の事情があれば,その解決に尽力します。 

上記事例では,仮に裁判をしたものの,結局敗訴した賃借人がお金を払うことができずに破産手続をしてしまったような場合には,相談時の未払賃料120万円の他に,解決までの5か月間の賃料100万円も,結局回収できず,200万円以上の損失が発生することになります。他方で,合意により,相談後,すぐに明け渡してもらえるのであれば,他の賃借人に貸すことによって毎月の賃料20万円が得られますし,未払いであった賃料についても分割払いとはいえ,全額回収できる可能性もあります。 

このように,賃料未払いという典型的な事案ひとつとっても,その解決方法如何によって,最終的な損益が大きく異なってきますので,賃貸経営トラブルが発生した時には,取るべき措置について十分な検討が必要となるといえます。


吉川綜合法律事務所 

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(ファミリーオフィス編集部)

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